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oshima : 見えない手間暇、ときを待つ

Oshima / 漆工房大島

〒922-0113
石川県加賀市山中温泉東桂木町ヌ-2-10

お正月などハレの日に使われることの多い漆器ですが、漆は木の耐久性を高めるために塗られたのがはじまりです。だから、日常使いをしてこそ、その魅力を深く実感できます。薄いのに硬い。堅牢なのにしなやか。そうした製品に仕上げるためには卓越した職人の目と手、そしてゆったりと時間をかけることが欠かせません。

totaro.thebase.in/

芭蕉も愛した温泉地の名漆器 /

山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひーー。かつて山中温泉を訪れた松尾芭蕉は、菊の露を飲んで700歳まで生きたという伝説を踏まえ「山中の湯ならその香りを吸っているだけで長生きできそうだ」と詠みました。その香りを吸っているせいでしょうか。安土桃山時代に生まれた山中漆器は、誕生から400年余りの時を経た今も、石川県が誇る伝統工芸品として愛されています。分業制でつくられる山中漆器の中で、木地師として創業した漆工房大島。現在は木地づくりからプロデューサー的な立場へと移行し、各工程のものづくりを束ね、さまざまなデザイナーとタッグを組み、伝統を受け継ぎながら漆器の新たな可能性を追求しています。

漆器の屋台骨「木地の山中」 /

石川県の漆器は産地ごとに強い個性があります。「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」、そして「木地の山中」です。山中は木地の産地として全国で確固たる地位を築いています。木地の出来は塗りにはもちろん、使い勝手も大きく左右する漆器の屋台骨です。縦木(たてぎ)取りと呼ばれる、山中独自の切り出し方法は、原木に対し輪切り状に木を切り出すので、歪みづらく耐久性が高いです。縦木取りをした丸太は粗挽き、中粗挽き、仕上げ挽きと段階を経ながら、道具をろくろからかんなへと持ち換え、繊細に削り出されてゆきます。また、木地作りにおいて最も時間の掛かるのが乾燥です。水分を含んだ木を乾燥させるため、木地師の工房には必ずボイラー室があり昼夜を問わず煌々と炎が燃えています。粗挽きの状態で2~3か月乾燥させた後ろくろの工程へと移ります。

美しきタフネス、その理由 /

数か月かけて完成した木地にはまず下地を施します。一層塗るたびに乾燥させ、下地の粉を少しずつ細かくしながら何層にも塗り重ねてゆきます。その後の漆の工程も下塗り、中塗り、上塗りと何度も塗り重ねられます。漆塗りではわずかなほこりが舞うことも許されず、職人が一人静かに器と向き合い、他の工程とは異なる緊張感が張り詰めます。 漆器づくりの工程を見ていると、見えない部分に膨大な時間と手間を掛けていることがよくわかります。塗師の一人が言った「健康であるためには外見を磨いても仕方がない。下地の役割は老いに負けない筋トレのような役割です」ということばを思い出します。工程ごとに異なる職人が丹念に手をかけることで、見事に鍛えあげられた漆器は、ハレの日に華を添えることはもちろん、毎日の食事に使ってもタフに寄り添える懐の深さをたたえています。

縁をつくるギフト

贈り物選びは双円